ピーター・コーエンはスウェーデン人のライター、映画プロデューサー、そして家具デザイナーです。ストックホルム大学の映画・ラジオ・テレビ・演劇学部を卒業後、スウェーデンで最も愛されるアニメの数々を制作し、ドキュメンタリー作品をいくつか監督してきました。彼がデザインしたシェルフCELLは2007年にスウェーデンのファニチャー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、ストックホルムにあるスウェーデン国立美術館にも収蔵されています。
How to use advanced technology to achieve the ultimate simplicity
ピーター・コーエンにはディテールへのこだわりがあります。それはおそらく、映画を中心としたストーリーテラーとしての長いキャリアを経て、60歳になってからデザイナーとしてデビューしたからかもしれません。映画制作に精通している人なら誰でも、それが多くのステップを伴う長いプロセスであることを知っています。映画製作者は魅惑的なストーリーを作るために、数え切れないほどのディテールをまとめる必要があります。受賞歴のあるコーエンのシェルフCELLの制作工程には、映画制作と同じように細心の注意が払われているのです。
「私は大量の蔵書を持つ人のために棚をデザインしようと試みました。それは空間を有効活用でき、美しく魅力的で、丈夫でありながら軽量な本棚である必要がありました」。
ある夜のこと、コーエンに解決策が降りてきたそうです。
「このアイデアは寝ている間に後ろから忍び寄ってきた感じがありました」とコーエンは言います。「まずワイヤーと鉄塔で作られた橋が浮かびました。そしてシェルフのDNAとなる二重らせん構造と細長い紐の形が見えました」。
その後コーエンは平行に並んだメタルワイヤーに、ビーズ状のキャリアを一定の間隔で取り付けた構造に取り組み始めます。
「このアイデアを形にできる人物を見つけるため世界中を探し回りました。そしてこれが制作可能なのは2つのメーカーしかないという結論に至りました。そのうちの一社がスウェーデンのメーカーでしたが、残念なことに最初は興味を示してもらえませんでした」。
しかし幸いにも、その後彼らは考えを変え、エンジニアの協力でコーエンが必要としたワイヤーを開発することに成功したそうです。
棚には革新的な思考と巧みな構造が求められました。
「強くても細身な構造を追求しました。薄さが重要なポイントで、棚はたわまずに重さを支える必要がありました」。
この目標を達成するため棚は高張力鋼板で作られています。車体の耐衝撃パーツとして使用されているものと同じタイプの鋼板です。白いラミネートの下にあえて黒い層を露出させることで、エッジが細い線のように見え、ライトでホワイトで空気感のある構図を水平に切断しているような印象を受けます。
CELLのプロトタイプが公開されると、たちまちコーエンはデザイナーとして成功を収めました。2008年にString Furnitureがローンチする以前に、CELLはすでにファニチャー・オブ・ザ・イヤーをはじめ、スウェーデン国内でいくつかの賞を受賞しました。現在CELLはスウェーデン国立美術館のコンテンポラリーデザインコレクションとして収蔵されています。
2021年、String Furniture は数年の休止期間を経てCELLを再びローンチしました。
生まれ変わったCELLは以前より技術的にも視覚的にも洗練され、頑丈なだけでなくユニークな細工が施されています。これは人生の半分以上を映画制作に費やしたことで、細部へのこだわりを追求し、何年かかっても諦めない精神が身についたコーエンだからこそ成し得た結果と言えます。